5年社会科授業導入編
パ−ト2 くらしを支える運輸「宅配便」編
〜金魚は宅配便で一日で届く〜
5年2学期に『くらしを支える運輸「宅配便」』の単元がある。そこで,こんな導入はいかがだろうか。
5時間目が望ましい(次の日が休みでないこと)。
何人かの子が算数(絶対に潰れない教科だと子どもが知っているものならオッケー)の準備を始めた頃を見計らい,おもむろに片手をズボンのポケットにつっこみ,もう片方の手でもっていたボ−ルペンでカツカツと机をたたき始める。少し起こっているそぶりをみせればよい。
この時点で何人かの子が様子が変だぞ・・・とこちらを見るはず。
と突然ちょっと怒った口調で言う。
「わ−い!」「えっ!?」「なんで?」「え−やりたい。」
など反応はまちまち。この先生があの算数をやらないなんて明らかにおかしい。何かあったに違いない,しかも何だか怒ってるみたいだし。。。と,次の瞬間教室は静まりかえらせれば成功。
そこで,さらにト−ンを落としてもう一度,
子どもたちはし−んとして,全員がこちらをみつめる。
4時間目にストレスってなあに,っていう勉強したよね。実は先生もイライラしてる
ことがあるんだ。あ−,イライラする!!
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僕たち,また何か悪いことしちゃったのかなぁ。。。と言わんばかりの目でこちらを見つめる子もいる。(おまえ,さっきのあれじゃねーか?とこそこそ話すのが聞こえたりして新たに悪いことが判明して本当にイライラしちゃうかも。)
「え−,何?」
「あ,でもなぁ,大した悩みじゃないじゃんとかって笑われそうだしなぁ。」
「そんなの,わかんないじゃん。それにいつもは先生にいろいろ聞いてもらってるから,今度は僕たちが聞くよ。」
なんて,涙が出そうなことを言ってくれたりもする。このあたりは学級事情によって料理して欲しい。
「うれしい!」
とすかさず,涙を拭うふりをしてみせ・・・。
改まった雰囲気で,
1組と3組には金魚がいるのに,どうしてうちには金魚いないの?
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ぷはっ!なんだ,そんなことか・・・と子どもたちは笑う。が,一人だけ笑っていない私の顔を見るやいなや,笑いは一瞬で消えた。
「え−でもさ,先生,うちにはメダカがいるじゃん。」
5年は理科でめだかを飼う。念のために言うが,くれぐれも金魚だけは4月から飼わないこと。
「亀じゃダメですかぁ?」
噴出しそうになる笑いをこらえるのも一苦労。
不思議なことにいつもと立場が逆転し,子どもたちは先生をなだめようと必死である。
違う!先生は「金魚」って言ってるの!金魚ってどこで売ってるわけ?
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「○○ストア−とかにあるよ。あ,うちの金魚一匹あげてもいいよ。」
「おまつりで,つればいいじゃん。」
と子どもたちはあらゆる方法を探しだすだろう。
待てない。すぐ欲しいのよ。あ−,ど−しよ,ど−しよ!金魚,無性に欲しくなって
きちゃった。
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とあとは,日ごろのわがまま振りを思う存分発揮すればよい。
「せんせ−,そんなわがまま言わないでよ−。」
と子どもたちも,困った先生にあきれ果てる。そろそろ潮時かなと思ったら,
ねぇ,どうせ買うなら,日本でいちばんいい金魚にしようよ。日本の金魚の産地み
たいなところから,取り寄せて。
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「それいいねぇ。」と子どもたちものってくる。
「でもさ,先生,時間かかるよ。すぐ欲しいんでしょ。」
「でも,いい金魚のためなら,ちょっとくらい我慢する。」
とかなんとか言って,いざインタ−ネットで日本の金魚産地を調べるところまでもっていく。
さて,日本には3大金魚の産地がある。
今回とりあげたのは熊本県長洲。理由は遠いからである。
子どもが検索下手で出てきそうもないときには前日までにお気に入りにこっそりアドレスを入れておく。または当日,自分でそのページを開き,さも今見つけたように,
「あっ!これなんかいいんじゃない?。先生気に入ったなぁ。」
とでも言えばいい。
「ねぇ,先生,ほんとに買いにいくの?遠いよ。九州だよ,先生。。。」
とネットで検索したものの子どもたちも不安でいっぱい。
九州なんてとっても遠いです。何日かかるかしれません。明日も学校はあるし。電話で注文してみます。
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なあんだか,変なことになっちゃったなぁ。。。どうなっちゃうんだろ?という思いを子ども達に残したまま,この日の授業は終える。
注文先はココ。こんなことをしょっちゅうやっている教師もいるだろうから,宅配便に
は慣れているお店と思われる。ちなみに宅配便で明日の午前指定にすること。
熊本県玉名郡長洲町大字長洲2029
中島養魚場 中島秀雄 電話 0968−78−0718
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次の日の朝。一時間目は社会にしておく。放っておいても子どもから聞いてくるが。
「先生,ホントに金魚買ったの?」
もちろん。昨日の午後4時に注文しました。だって,欲しかったし。みんなもその
ためにネットで探してくれたんでしょう。
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「まぁ,それはそうなんだけど。。。」
いつ来るのかなぁ?先生楽しみ。ちょっと聞いてみよう。ぴったり当てた子には金
魚の名前を付ける権利をあげる。
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この,名前を付ける権利,ほかの場面でも使えて結構おすすめだ。俄然子どもがはりきること間違いなし。
以下クラス結果
1ヶ月後 0人 8日後 2人 4日後 1人
15日後 0人 7日後 3人 3日後 4人
10日後 3人 6日後 1人 明後日 6人
9日後 1人 5日後 2人 明日 3人
今日 0人
ざっと聞いたところで,
「僕は,3日後だと思います。だって、九州からくるからです。」
「いくら九州だって一ヶ月や15日もかかったら,死んじゃってるよ−。」
「ク−ル宅急便かな?(それって冷凍?)」
「私は,1週間はかかると思います。お店から出発するにも時間がいるし・・・。」
「それに,明日は休み(勤労感謝の日)じゃん。どうする,先生,明日来ちゃったら。」 「とか言いつつ,今日来ちゃったりして。。。」
「まっさかぁ。」
とわいわいやる子ども達。
そこへ予定通り,内線電話が鳴る。プ−プ−プ−。なにくわぬ顔で内線をとる。
黒猫ヤマトから宅急便が届き次第内線電話をしてくださいと副校長先生にお願いしておく。うまくいけば10時前後につく。とにかく討論をやっている最中に電話がかかってくるのがベスト。
実は,宅配便,もうとっくについているのである。午前4時ごろには新横浜についていて8時ごろまで近くの倉庫で待っているのである。9時過ぎれば学校まで来てしまう。そんなときは,金魚の箱を職員室に隠し,何時何分に内線入れてください,とお願いしておく。副校長もわけがわからないが鳴らしてくれる。
と教室を出る。
ここで,熊本の長洲から届いたばかりの本物の金魚が待って上がる。
ダンボ−ルを教室に運びこむと,「え,ウソ!もう来たの?」と驚きの大歓声。中にはなんともホントにかわいらしい金魚が。(ちなみに金魚はなまもの扱いなのだ。ご存知だろうか?)
「わぁ〜!!!」と駆け寄る子どもたち。
「早−い!もう来ちゃった!」
「かわいい−。」
ここで,私の偉大なる(?)演技もやっと終了。
ところで,みんな。この金魚,どうやってここまで来たんだろうね?
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「....。」(そうか,そういうことだったのか。はめてくれたね,先生。)
というわけで,ここから社会・くらしを支える運輸「宅配便」の勉強にはいっていくのである。